大分県立大分上野丘高等学校同窓会ホームページ<公開版>

『工藤和信さん(20期)の詩』

(2012.08.21 掲載)

『工藤和信さん(20期)の詩』

 

先日(平成2485日)に別府市のニューライフプラザで第53回大分県短文学大会が開催されました。

 

その中で、現代詩の部門で20期の工藤和信さんが大会賞を受賞しましたのでご紹介します。

 

 

 

「バックミラー」

 

工藤和信

 

 

       鏡の中の自分

       との決別が始まる

       車を運転中に

       ふと映った

       自分の左目

       の無表情さに驚き 驚く

 

       自分で 自分を

       避けて見つめる先に

       過去達が遠ざかる

       舗装された道路が跳び

       家並みが 電柱が跳び

       人々が 時空が跳ぶ

  

       僕は追いかける

       過去へと逃げる

       もの達を捕まえに

       僕が追いかけると

       追いかけられてもの達が

       目の前に現れる

       苦痛の顔して現れる

 

 

       黒い大きなものが

       家を呑み込み  

       追いかけ 追いかけてくる

       船を 車を 人々の魂を

       幼きもの 年老いたもの

       ありとあらゆるものを

       呑み込み 追いかけてくる

 

       巻き戻しの映画のように

       ゆっくりと ゆくっりと

       無言のままに

       あるいは喧噪にして

       ジェットのように

       すばやく 迅速に

       僕を追い越そうとする

 

       僕の左目の魂は

       津波に襲われた人々の魂

       その思いを

       一瞬にして 永遠に

       受け継ぐ 受け継いでゆく

 

       過去を過去から映し

       様々な景色 人々のこころ

       を映し続ける大和の銅鏡に似て

       時として 横暴 傍若無人

       悲惨 過酷 心の氷河期を乗り越え

 

       人が人であることを忘れる日

       大地の陣痛が始まる

       卑弥呼に陣痛が始まる

       その子どもの

       その孫たちの子が生まれる