大分県立大分上野丘高等学校同窓会ホームページ<公開版>

工藤和信氏(20期)の詩集(6)

(2012.03.21 掲載)

工藤和信氏(20期)の詩集(6

 

 

『丘に立つ』

 

工藤和信

 

夜の暗闇が薄れていった

音もなく水平線が空と海を区分

朝日が昇る準備を始めた

潮風が吹き上げてくる丘の上

町を見おろし一人の老人が立つ

 

あの時あの一瞬

風化しようのない鮮明な記憶

あれからどう生きてきたのか

総ては あのいちにち

 

我が町 我が故郷

そこに 愛すべき家族はいない

今年の雪は 苦しくて辛い

 

木枯らしが吹き

むき出しになったガレキ

白木に書かれた無表情な番号

名もなき墓標が並ぶ丘

 

降り積もる雪が世界を変えようとも

ガレキの山があることを

忘れてはいけない

多くの人々の鎮魂の詩を

忘れてはいけない

 

 

201211 大分合同新聞 文芸コンクール 一席)